alphabetica’s diary

アメリカに住んでいます

アメリカのトラックに関する新規制(ELD mandate)

アメリカの国内輸送の大部分を担うのがトラック輸送だが、今年12月18日から新しい規制が始まる予定となっており、業界に与える影響が懸念されている。新規制はELD (Electronic Logging Device)使用の義務化で、これまでトラックドライバーはペーパーの記録用紙を使って業務時間や運転時間を管理していたが、今後はエンジンの稼働状況等から自動的に記録される電子機器を利用することが義務となる。

 

懸念される影響としては、

1. ELD導入のための設備コスト
2. ELDによる「正確な記録管理」

の2点がある。

 

導入コストについてはELD自体は500ドルから1000ドル程度のようだが、ELD使用のトレーニングや新しい管理体制の構築などの見えないコストもトラック業者は強いられることとなる。

影響が大きいのは2点目で、現行のペーパー記録方式だとはっきり言ってドライバーは記録をごまかし放題で、不正が横行していると思われる。業務時間のルールは下記の通り。

 

- 11-Hour Driving Limit
10時間休憩を取ったあとは最大11時間まで運転してよい。

- 14-Hour Limit
業務開始後14時間を経過したら、運転してはいけない。

- Rest Breaks
最後の休暇から8時間以内か、最低30分の仮眠室滞在後のみ運転してよい。

- 60/70-Hour Limit
連続した7日で60時間、8日で70時間の業務時間経過後は運転してはいけない。その後、業務再開までには34時間の休暇を取らなければならない。

*業務 - 運転だけでなく、荷受けや荷降ろしなどの業務を含む。
*運転 - 文字通り運転席に座って運転している状態。

 

新規制発効前の現時点では、通常ならルールを遵守すれば2日かかるところも休憩時間を削ってドライブして1日で配送を終了し、次の仕事を引き受けるということが多々あると思われる。配送先まで残り2時間のドライブであれば、ルール違反でもそのまま運転してその日のうちに配送を終了したいと思うドライバーの気持ちもわからないではない。

 

ただ、今後はこのような不正はできなくなるため、実質、トラックの供給減となり、必要な配送量にトラックが追いつかない(あるいはつかまりにくい)状況が予想される。当然トラック業者としては同じ期間にこなせる仕事の量が減るので、単価を上げることになるだろう。

 

荷主側としては、このようなコスト面の影響に加え、リードタイムの長期化を考慮して対応する必要があるかもしれない。


When are drivers subject to the ELD rule required to start using electronic logging devices (ELDs)? | Federal Motor Carrier Safety Administration
https://www.fmcsa.dot.gov/faq/when-are-drivers-subject-eld-rule-required-start-using-electronic-logging-devices-elds

 

Summary of Hours of Service Regulations | Federal Motor Carrier Safety Administration
https://www.fmcsa.dot.gov/regulations/hours-service/summary-hours-service-regulations